シンセミア読了

2008年6月26日 読書
英語はからっきしダメなので、ネット友人に聞いてみたところ、
sin semillas は「純度の高いマリファナ」原義は「種なし」という意味とのことでした。同名のロックバンドも活躍しているようです。少し根性を入れて調べたところ、Urban Dictionary の記載を見つけました。
http://www.urbandictionary.com/define.php?term=sinsemilla
あるいは、スラッグとして別の意味で流通している言葉かもしれませんが、作中に「シンセミア」の意味についての記述はありませんでした。

さて、わらわらと人物が登場するこの小説、大変面白く読みました。実在の町(阿部和重の出身地)を舞台に、ろくでなしどもが愚かさを競い合う底の内容で、老若男女を問わず、高潔な人間は一人も登場しません。
最後は盛大に愚か者どもが死にまくって、ジ・エンド。
作品全体を通して、神話的世界とアメリカの陰が交錯します。

フォークナーや中上健次との類似性が論じられているようです。私は、奥泉光の作品に似た感触を覚えました。

この作品によって、村上龍が陳腐化されたというのは、よく分かります。しかし、村上春樹を陳腐化することまではできないと思いました。もっとも、「大」のつく傑作と評した蓮實重彦なら、そんな「読み」を軽蔑することと思いますが。

もうひとつ。文章が雑に流れている部分があるように思いました。多分これは、原稿用紙に手書きではなく、パソコンで文章を作ったためではないかと推測します。いわば、「パソコン文体」ともいうべき特徴があるように思いました。

ということは、それを「雑」と感じる当方の感覚が、既に古いのかもしれません。

アキバ事件を先取りしているような箇所もあり、久しぶりに長編小説の世界に遊ぶことができました。

続いて「グランド・フィナーレ」を読む予定です。

コメント